半月にわたるアメリカ滞在のあとは、ベオグラード、モスクワ、オスロと旅をして、今はバルセロナに向け移動中。え?なに遊んでるんだって? 観光してる場合かって? いえいえ、そんな優雅なもんじゃないっす。ニューヨークのあとは、連日移動のコンサートツアー。観光どころか、コンサート会場とホテル以外は移動の車か機内。おまけにホテルに戻るのはギグが終わった深夜。毎日ホテルに戻って考えることといえば、バスルームで洗濯したその日の服を、出発までの間にどやって乾かすか。でもって、数時間後の早朝に再びホテルをチェックアウトして、車で空港に向かい、ひたすら機内で睡眠の過酷なツアーであります。そのいつもなら熟睡するはずの機内で、今日は日本の放送時間にあわせてNHKから送られて来た「トットてれび」第4回を見ております。
夢のような昭和三十年代が終わり、時代は昭和四十年代。世は高度成長期。画面でも路上の音楽家の姿が消えます。第一回から三回まで、路上にバンドマン達が何人もいたの気付いていただけましたでしょうか。これ、わたしのビッグバンドのメンバー達やテニスコーツのギタリスト植野くんなんかが、早朝から深夜まで、実際に劇伴を演奏しながら撮影につきあってくれてたんです。
こう書くと、高度成長期以前は新橋の路上にミュージシャンがいたのかって疑問でてきそうですよね。それがですね、意外や意外、戦後間もなく、新橋の路上には、米軍基地で演奏の仕事を待つバンドマン達があふれていたそうなんです。携帯どころか電話すらろくになかった時代、バンドマンたちは仕事を求めて新橋界隈に集まり、ここにこるバンドマンを集めて米軍基地のクラブに紹介するインペグ屋(マネージャーのような人っていったらいいのかな)を待ってたんだそうです。基地から車でやってきて、「はい、トランペットにサックス、ベース、ドラムにピアノ~~」なんて言いながらその場で集めたメンバーでバンドを組んで基地で演奏、中にはベースの人数が足りなくて、ベースだけ持って、弾いてるふりしてればいいやなんていう「たちんぼ」と呼ばれる人までいたそうで、さすがに、こんな世界はオレは知りませんが、でも、音楽の世界に足を踏み入れたころの先輩達から聞いたウソのような本当の話なんです。そんなバンドの中から戦後の一大ジャズブームが起こり、クレージーキャッツが生まれたり、後々はそんな中から前衛ジャズをやる、僕らの大先輩達が出て来たわけで、そう考えると、まあうっすらだけど僕らが今いる世界にもちゃんと繋がってるなって思うわけです。
徹子さんがニューヨークに行ったのは1970年代。今現在のニューヨークは治安も極めて良好。マンハッタンには金色に輝くピカピカの張りぼてのようなトランプタワーなんかがいくつも建っていて、街中は中国や東欧のお金持ち観光客であふれかえってますが、当時のニューヨークはずいぶん雰囲気も違っていたと思います。わたしが行き出した80年代後半、90年代初頭でさえも、治安は相当悪かったですから。
トットちゃん、いったいどんなニューヨーク暮らしをしていたんでしょうか。当時の有名な写真をネットでひろったので、下に貼付けておきますね。それにしても、年上の方にこんなこと言うの、失礼とはおもいつつ、でも、めっちゃ可愛いなあ。まわりにいた人は、きっとみんな彼女を好きになっちゃうんだろうなあというのが分かる写真です。ドラマでの満島さんは、この徹子さんのチャーミングな雰囲気、凄く丁寧に、大切につかんでいるように思います。
今回、ラストに出てくるのは、徹子さんのニューヨーク時代にちなんで「ニューヨーク、ニューヨーク」(実際にこの曲がヒットしたのは、徹子さんがいた時代の少し後です)。ミュージカル仕立てでこの曲をやろうってアイディアは満島ひかりさんからでした。オーケストラのアレンジは江藤直子さん。すごくいいアレンジだと思います。今回彼女は、劇伴の方でも何曲か担当してくれています。そして一緒に踊って歌ているチャップリン役は、満島さんの幼なじみでもある三浦大知さんでした。
第三回 劇中の音楽
「ニューヨーク、ニューヨーク」
作曲 John Kander 作詞 Fred Ebb
編曲 江藤直子
歌 満島ひかり 三浦大知
演奏
江藤直子(p,セレスタ) 堀米綾(harp) 斉藤寛(fl) 井上梨江(cl) 鈴木広志(sax) 東凉太(sax) 織田祐亮(tp) 佐々木大輔(tp) 今込治(tb) 木村仁哉(tuba) 水谷浩章(b) 芳垣安洋(ds)
ストリングス:金原ストリングス
指揮 大友良英
演奏録音、NHK506スタジオ
「はてな劇場」のテーマ曲
オリジナル音源より
作曲 齋藤英美
「繭子ひとり」のテーマ曲
オリジナル音源より
作曲 柳澤剛
「徹子の部屋」テーマ曲
オリジナル音源より
作曲 いずみたく
劇伴
作曲,プロデュース Sachiko M、江藤直子、大友良英
編曲 大友良英スペシャルビッグバンド
ストリングス編曲 江藤直子
ストリングス指揮 佐々木次彦
劇伴演奏
大友良英(g) 江藤直子(p,セレスタ) 堀米綾(harp) 中山正瑠(oboe)斉藤寛(fl, picc) 井上梨江(cl, bcl) 鈴木広志(sax,b-cl, rec,harm) 江川良子(sax) 東凉太(sax) 佐藤秀徳(tp,flh) 織田祐亮(tp)今込治(tb) 青木タイセイ(tb)木村仁哉(tuba) 大口俊輔(acc,org,toy piano) 坪口昌恭(org) 水谷浩章(b) かわいしのぶ(b) 芳垣安洋(ds、perc) 小林武文(ds,perc) 上原なな江(mar, per) 相川瞳(per)
コーラス:サンズリバーズ(高瀬”Makoring”麻里子、飯田希和、加藤圭子)
ストリングス:金原ストリングス
筑波大付属小学校のみなさん
音響デザイン 柴田なつみ
録音 NHK506スタジオ 2016年3月15,17,28日 4月26日
ミックス NHK604スタジオ 2016年4月4日~4月28日
エンジニア 高橋清孝 中井レイ
アシスタントエンジニア 森山芳晴
制作 佐々木次彦(ムスタッシュ)
いくつか訂正です。
第4話の音響デザインは柴田なつみさん。
それから路上ミュージシャンが消えたと書きましたが、実は一カ所だけ、テニスコーツの植野隆司さんが出てます。
それと、ニューヨークニューヨークの参加メンバー、わたしも指揮で参加してました。自分自身をかきわすれておりました〜。
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